世界の説明書
青空


「パパ、どうしたの、さっきの人は何だったの?」 名子は突然の事で何が起きたか解らないまま車の中で一人待たされていたので、また母親の時と同じような事件が起きるのではないかと気が気でなかった。

「なんでもないよ。ただ、あの人はかわいそうな人でね。自分が何をしているのかも分からなかったんだ。そして、自分の母親が死んでしまったとパパに話してきたんだよ。きっと心が壊れてしまったんだと思う。」 

そう言ってから、母親が死んだ、という言葉が自分達親子にとっても同じくらい恐ろしいフレーズであった事を思い出した。ちらと名子に目をやった。名子は俯いたまま、自分と別の人間の境遇をはっきり分けて考えようと、落ち着かなさそうに頭を振っていた。

「ごめん、ごめんな、名子。誰かが死ぬとか、そういう事はもう話さないって決めたのにな。パパが悪かった。ほら学校送れちゃうぞ。ほら、今日もがんばってこいよ。転ぶなよ。」

名子は無理して作った笑顔でどうにか車の外に出た。ひび割れた学校のチャイムがもったいぶったように2回なった。
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