世界の説明書
そして、明子との結婚。世間知らずな若者同士が必死に大人ぶって互いの両親を説得した。初めての事だらけだったが、不安より期待の方が大きかった。それから、静かな夫婦生活が一気に忙しく、騒がしくなったあの日。病院の待合室で、これから自分は父親になるのだ、しっかりしろ、何をどうしっかりするのかすら解らなかったが、お見合い相手にでも会うような、憧れの会社の面接試験の前のような緊張が全身を包んだあの日。自分よりも先に親としての自覚を、名子を身ごもった時から持っていた明子の強さに改めて惚れ直したあの日。初めて名子をこの腕に抱いた瞬間、自分の夢がまた一つ叶ったんだと実感した。夢とは人間が想像できる最高の結果の事ではないか。夢の行程は夢があり続ける限り、人を夢中にさせる。叶わない願いはあるが、夢は自分が納得すれば叶い、納得しなければ続く。今の自分の夢とはなんだろう。幸せだった頃に戻れる事か。家族全員が平和で、健康で生きていける事なのか。いや、それは願いだなと、正人は思った。