世界の説明書
 夢は、、、そこでふと一つの事が気になった。何故あのホームレスはあんな事を口走ったのだろう。明子の事を。それも、まるで誰かに台詞を教えられた様に。何故だ。あの男は確かに、誰かに、あの台詞を言わされていた。「お前の妻は俺達の性欲処理機」あのような疲れ果て、無害にもみえる男の口から出るにはあまりにも卑猥すぎる言葉だった。まるで正人の神経を逆撫でする為だけの様な言葉。世界中で、今一番正人が最も耳にしたくセンテンスだった。そして、正人はその言葉を聞いた時に自分が一瞬だが、彼に対して抱いた殺意を思い出した。確かにあの時、一瞬、正人はあの男を殺そうと思った。彼が自分の母親の不幸の話をしなければ確実に正人は、彼に対し何かしらの物理的攻撃を加えていただろう。もしかすると殺していたかもしれない。あの瞬間正人は、自分にはその権利があると思えた。血なまぐさい感情が溢れそうになった。危なかった、正人は冷たい汗が背骨の上を流れていくのを感じた。もし、自分があのまま、自分の激情を抑えきれずに彼に暴力を振るっていたら、彼の事を殺してしまうか、いや殺さなくとも、大怪我はさせていたかもしれない。そうすれば、正人は確実に警察に捕まっていた。
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