世界の説明書
 もし、自分が警察に捕まる様な事があったら、名子はどうなる。親戚達に名子の面倒を頼めるか?いや、まず嫌がるだろう。名子の目が失明したときも、明子が死んだ時も、正人側の親戚達はただ、「あまり気を落とさずにね。」との一言の慰めがあっただけだし、明子の親戚といえば、寝たきりの母親が明子の地元の老人介護施設に居るだけだった。とすると、名子をあの学校横の施設に預ける他無い。そうなれば、誰が名子の事を守るのか。名子は一人になる。名子が一人に成る事を望んでいる誰かがいる。その為だけに、自分があの男を殺すように仕向けたのではないか?正人はいやな予感がしてきた。何故、誰が、なんの為に。そして、まさか明子の死も、今回の件と何か関係があるのか。あの男が言っていた天使とやらが、何かを知っているのか。だが、彼は天使に殺して貰うためと話していた。嘘をついているようでも無かった。ただ、本当に頭がおかしいだけなのか。正人の心には様々な疑問が渦巻いていた。そして、誰かが自分と名子を離ればなれにしようとしているのではないか、理由は分からないが、自分が名子の傍にいるのを嫌がる人間がいるのかも知れないと考えるようになった。一体誰が、何の為に。気がつくと正人の車は明子の墓のある教会の前を通り過ぎていた。
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