世界の説明書
反省


 ぱちぱち、ぱちぱち、二郎の機嫌はすこぶる悪かった。人生で二度目の挫折を感じていた。自分の計画の失敗は、自分の人選ミスにあったからだ。あれほど奴の精神をめちゃくちゃにかき回し、餌まで与えたのに、何故あのホームレスは最後の最後で泣き出すというヘマをしたのか。何故だ。自分の母親が死んでも何も感じ無くなるまで、奴の心を破壊したのに。何故だ。NAZEDA.事実は小説より奇なり、テレビに映る文化人ぶったお笑い芸人がグレーのスーツの威厳を楽しむかのように唱えていた。
「ち、えらそうにほざきやがって。まあでも確かに、あのおっさんが警察に捕まった所で、また別の誰かがあの子の傍に付くだろうし。そうなったら、また似た様な作戦を考えなきゃいけない。という事は、今回の計画は、実験としては成功だ。結局の所、あの子の周りの人間に何をしたって、あの子は一人にはならない。盲目のあの子が一人で町を歩くには若すぎるし、一人暮らしだってまだまだ出来そうも無い。ただ、あの親父も死ねば、あの子の心は相当壊れるがな。奴の精神も嘗め回したい。体だけじゃなく、心も俺の物にしたい。へへへっへさあて、どうするかな。」
 LUCKY JUICEを一気に飲み干し、開ききった瞳孔のまま、二郎は哲学者の苦悩に酔っていた。結局の所、あの少女に何をしたいのか。二郎はじっくり考えこんだ。自分が自ら、直接手を下したいのはあの子だけだ。他の障害物は他の誰かに消させればいい。あの目の見えない少女の体も、心も支配したい。あのホームレスの時のようなやり方で、彼女の心を支配したかった。しかし、あの男はミスを犯した。二郎は己の詰めの甘さを呪った。人の心は体以上にタフに出来ている。それが今回の実験の成果だ。
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