甘い記憶

覚えてる??

「−−妹?」

「あぁ…今はいないけどな…。」

『……それって…』
桜の小さな記憶が,今ぼんやりと,よみがえってきた…。

−8年前−

桜が小学1年生の時のこと。

実は桜には一つ上の兄,春樹がいた。桜は兄のことを”春くん”と呼んでいた。

二人はどこに行くのにも一緒で仲もよく,ケンカもなかった。

ある日,お母さんが「実家にお泊りしようと思うの。」と桜と春樹に言った。

「お泊り行く〜!」

まだ幼かった桜が言う。

「…春樹は?どうする?」
お母さんが問い掛けた。

「…俺は……いい。」

意外な答えに桜はびっくりしている。いつも一緒だった二人だから。

「春くん…どうして行かないの??」

「お父さん…一人でお留守番…可哀相だから…。」

少し淋しげに春樹が言う。

「やだ!!春くんも一緒!」

「お兄ちゃん,行きたくないんだって!」

お母さんが言った。

「やだやだ〜!!春くんも行くの〜!」

わがままを言う桜を無視して春樹は自分の部屋に行ってしまった。

お母さんはわがままを言っている桜の手を取り,さっさと家を出て行った。

その時−−

「桜!!」

春樹らしい声がしたため,
桜は後ろを見た。

「桜…元気でな…!俺が居なくても,ちゃんと生きてけよ…。」

桜は意味が分からなかった。

「…それってどうゆう意味??」

桜が問い掛けた。

「答えは…すぐに分かるよ…」

淋しげに春樹が言った。

「?」

「桜!手出して?」

「…うん。」

春樹の手から可愛い犬のマスコットが出てきた。

「可愛い!」

「これ…お前にやるよ。」

「良いの!?」

「うん。俺とオソロイだよ…これで最後だと思うから……お前にやりたくて。」

『春くん…さっきから淋しそう…。』

「また…な?」

「うん!すぐ帰って来るね!」
桜が元気よく言った。
犬のマスコットをもらったためか,見違えるように元気になった。

だが,着いたところが誰も居ないアパートだったため,桜は「実家じゃ…ないの?」と思った。

一週間二週間たっても家に帰らないから,さすがに気が付いた桜。

『家出…?』


< 4 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop