甘い記憶
男子生徒
−昼休み−

桜は屋上へ向かった。
お弁当を食べるためだ。

「♪ルンルンル〜ン お弁当,お弁当ルンルンル〜ン♪」

この年にまでなって,恥ずかしい歌を平気で歌っている。

屋上のドアがガチャッと音を立てる。

「あれ?」

いつも人がいないはずなのに,この日は一人だけ人がいた。

『誰だろう…?』

桜は不思議そうな顔をしてその人を見つめた。

すると…

「……ん?」

『−−! 目あっちゃった!!』
桜は中に隠れてしまった。
だが,隠れてるところを見られてしまった為,その人はすぐに分かった。

「どうして隠れるの?」

男子生徒の声がして,桜は少しびっくりした様子だ。

「…ちょっと…びっくりして…。」

桜が答えた。

「俺にびっくりしたの?」

「…いつも…人が来ないから…。」

「そっかぁ…俺…空が好きだから,休み時間になったら今日からここに来ようって思ったんだ。」

「そ…ですか…。」

「…あんたは?」

「へ?」

いきなり問い掛けられた桜は,びっくりしている。

「…わ,私は…お弁当を食べに…。」

桜は恥ずかしそうに言った。
他のみんなは,ほとんど教室で食べているからだ。

「へぇ〜☆そうなんだ!俺持って来てないんだ↓↓ちょっとだけで良いから分けてくんない?」

明らかに年上だと思った桜は,さすがに断れないと思ったのか,お弁当を少し分けてしまった。
『あぁ〜 私のお弁当…』

「なんかごめんな?初対面なのにさ…」

「だ,大丈夫ですよ!!私っお腹減ってな…」
ギュルルル…

桜のお腹が,ご飯を欲しがるようにギュルギュルと音を立てる。

「こ…これは!…その……」

恥ずかしそうに桜が言った。

「やっぱり腹減ってたんだな(笑)ゴメン!」

「本当に大丈夫だから!!」

「優しいんだなあんた。…まるで……俺の”妹”みたいだ…。」

その瞬間,桜の体がなにかに反応したみたいにビクンッと動いた。
「…え…?」

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