愛してよダーリン
周りが騒がしいけど、樹の声だけは、はっきりと聞こえる。
低いのに甘く聞き取りやすい声。
聞いてるだけで、胸の奥の方がキュンとする。
………って、それはあたしが樹を好きだからか。
どんなに冷たくされても、めんどくさそうにされても、
あたしは樹が大好き。
そんな自分を、自分で相当重症だと思う。
「覚えててよ!あたし帰れないじゃん!」
『知らねぇよ。駐輪場に止めたんだから探せばあるだろ』
………なっ!
あたしが帰れないかもしれないのに、樹はちっとも自転車のある場所を教えてくれようとしない。
そりゃあ自転車のある場所が分からないから言えないんだろうけど、
だったら一緒に探してくれればいいのに……。
まぁ、だからって期待はしてない。
樹があたしのために、何かをしてくれるわけがない。
だって、樹はあたしが困るのを見て楽しんでるに決まってるから。
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