いばら姫



つかみ掛かるみたいに抱きしめた


アホみたいに体は冷たくなってるし
息も粗くて、咳込み始めている


「……阿尾森の冬舐めるな!!
気温何度だと思って…
肺炎起こしたらどうするんだ!!」


――― そんな風に真剣に怒っても
アズは笑っていて――

俺はもうどうしようもなくなってしまう



「…家 わかんないから
淳に聞いた話で
十輪田湖と、
コンビニの事言ってたから―――」


「…何さしに来た?!」


そう言った途端
アズはビクリとして
ポケットから
薄い透明のケースを取り出した


「ご…ごめんなさい
もう帰るから、怒らないで…」



アズは凄い勢いでそれを俺に渡すと
踵を返し、離れて走り出した


「違う!!アズ!!
そういう意味じゃ無い!!
待てって!!
―――― 俺びっくりして…

"どうしてここに来たんだ?"って
そう言えば通じるか……?!
―――これ、何だ?!」



無理矢理腕を掴み
顔をこちらに向かせた

碧い瞳は
まだ怒られた子供みたいに怯えていて
それに刺激され突然生まれた
何だか判らない凶暴な気持ちが怖くて
慌てて大きく息を吐いた


「…アズ
とにかく家に来て……
お前……冷え切ってるから……」




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