いばら姫




東京駅から
メトロに乗って5分


霞乃関駅 B2出口
日比谷野外音楽堂方面


地下からの階段を昇る


相変わらずのビル群
静かで固い、暑い空気と
そこに混じる、木々の匂いで
少し奇妙な空間



――― 緊張してるのかな



昨日までは
少しハイテンションで

だけど今朝は
ここ最近の怠い調子で起き
シャワーを浴びた

髪は切っていなくて、そのままだ



ミチルとの待ち合わせは
改札を出てすぐの広場にある喫茶店

見回すと
銀行や、歯医者に郵便局もあって
ひとつの街みたいになっている


ミチルはパラソルの下の席に
足を組んで、
タバコを吸いながら待っていた


俺が近付くと
少しギョッとした感じで顔を上げる




「……淳 …? 」


「 久しぶり 」


「………うん 」


「…何よ 」


そう言って笑うと
ミチルは慌てて返答する


「……え なんか
少し痩せたし…なんか… 」


「…情けなくなったろ 」


「………カッコは…
悪くなってないよ…
むしろヤバイって言うか…

なんか、衣装着させて、
ビジュアルバンド系やってって感じ… 」


「 何だそれ 」



ミチルの向かいに座ってタバコを出す

すぐにやって来たウェイターに
アイスコーヒーを注文した





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