いばら姫




―― 建物から出た鉄柵の向こうは
緩い風に従う様に、白く煙っていて
排気ガスの匂いが立ち込めている


消火栓の横には、オレンジ色の車

そこに寄り掛かる二人は、
年期の入ったドレッドに黒いコート
黒い丸刈り頭に、赤いダウンの男

…運転席から窓を手を置く指には
太い金色のリングが光る


携帯で電話をしたまま歩くポールは
赤いダウンの男らしき名前を呼び
他の二人も大声で何事かを交わし
ハイタッチしている

よく海外ドラマに出てくる
裏通りの雰囲気そのままだ



「オカダサン!!安心して下さい
私の友達です
これからジョンさんの所へ
連れて行ってくれます
――― 乗って下さい!」


あちこちへこんだまま
長い事修理をしていなさそうな
オレンジ色の4ドアは
かなりバッチリ錆が浮き

サスもイカレている様で
一斉に乗り込んだ途端、
前後左右にユラユラと揺れた


けれどポールだけ、自転車を担いだまま
運転席のBrotherに手を振り自分は乗らない


「あれ ポールは? 」

「これから私は、学校の友達の所へ行き
やる事があります」


「―― ポール… 学生?!」

「はい 高校生 です」

「 …… 」



… 俺より上かと思ってた

でも年とか経歴とか、
あまりプライベートな質問を
面接でも無いのに
初対面でいきなりするのは
日本くらいだって聞いてたし

こんな状況だから
敢えて聞く事はしなかった


ポールは颯爽と自転車に乗り
暫く一緒に道路を走る


碁盤の目の様に走る道
少し広い交差点に出ると
誰に教わったのか、日本語で
「 あばよ!! 」とウインクしながら
親指を立てて道を分かれて行った






< 492 / 752 >

この作品をシェア

pagetop