いばら姫




角を曲がってすぐの大型デパート
その入口に滑り込んだ


ジョンさんと灰谷が、俺を追う様に
その前を通過し、バタバタと走って行く


日本では考えつかない位の
プレゼントの箱を

カートに山と乗せて、
客が通路を進む、明るい店内


日本なら、バレンタインが
こんな感じだなと思いながら
… 少し間を置いて
店の反対側のドアから出る





――― その時、自分を動かしていたのは
"不思議な感覚"だった


もしかしたら、ここへ来て初めて、
自分のコミュニケーションだけで
あのトウシューズの青年と
相対出来たからかもしれない




…俺は知らない所が苦手だし
恥をかくのも好きじゃ無いから
自分を知っている人間が居る場所か
誰かと一緒に行動する事が多かった


―― オンラインゲームにしてみても
開始当初は、チャットで上手く話せない
イライラもあったし



――― 知らない景色

早くて聞き取れない
上手く伝えられない言葉

誰も彼もが、自分より上背があって
誰も彼もが、自分より強そうに見える ―


道に迷った末に
" Level一桁が
こんな場所に来てんじゃねえよwww "

そんな風に、
いきなり対話が送られて来た事もあった


俺は『死に戻り』
―… 敵にワザと負けて
街のセーブポイントに戻る方法が嫌いで
意地になって帰り道を捜し

心配して、擦れ違い様に
声を掛けてくれる人も居たのに
迷ってると言うのが悔しくて、無視した




空はグレーの混じったオレンジから
紺と黄土色に変わって
少しばかりの星と、太陽に代わって
地上のオレンジが辺りを照らす


三方をビルに覆われた広場
目が痛くなる電飾が燈った
真っ白なクリスマスツリー

階段の下には
ピタに似たソウルフードの屋台が
ハーレム近くの市場で見たそれより
1ドル高く、売られている



携帯をポケットから出して
仲良く手を繋ぐカップルの傍に行った



「 Excuse me 」



――― 始まりの言葉
それが、第一声









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