いばら姫





そして初めて、
地下鉄へと降りてみる事にする

地面に開いた四角い入口から、
下に向かう階段と手摺り

看板にはEとか1とか、
路線の番号だけが書かれていて
確か、日本みたいに
駅の名称は無いんだよなと
映画からの知識



天井は思ったより低く、殺風景

蛍光灯の照明も、何だか薄暗い
まず券売機を探したけどよく判らなくて

様々な人が列んでいる、
壁面に迫り出した銀色の機械に
自分も並んだ

横を通って行く人の手に黄色いカード
それを皆、改札に差し込み、
ゲートを回して通過している

四ドル出して、自分もそれを買ってみた



びっくりしたのは、そこかしこに
ストリートミュージシャンや
パフォーマーが居る事

――― 多分、ラッシュタイム


誰も文句を言うでも無く

ギターの音に合わせて、
足でリズムを取っている
オフィス勤め風の、
アタッシュケースを持った男性


――― 人が一番居る所を探して
ホームに立ち、電車を待つ

すぐにやって来たのは
ブリキ造りみたいな車両


ドアが開いて乗り込み
無意識に、吊り革を探した手が泳いだ


…… そういえば無いのか


プラスチックで出来た座席に、手摺り
席は空いていなくて、
ドア際に背を寄せて立った


かなり揺れるし、何より凄いのは
走る際の轟音

…これ、誰かと一緒に乗っても
話聞こえないんじゃないかと思う




―― 次の駅で
妊婦さんが入って来た


すると誰が言うでも無しに、
一番近場に居た男性が、席を譲る


… 東京に来てから
こんな光景見なかったな


それに見入っていたら
手の中の携帯が震えて驚き

閉まりかけたドアから、
慌てて外に、飛び降りた







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