いばら姫
…… ちょっと待っててくれって
伝えただけなのに、汗をかいた
…映画のキメ台詞みたいのは特徴あるから
覚えてるんだけど
一方通行
そういえば、最初のカーチェイスの時
マイクはだいぶ、
大回りをしていたかもしれない
―― 車に着き、チップ込みで
少し多めに金を渡す
彼はそれを、黙って受け取り
「 Mother? 」と聞いて来た
…… もしかしたら、この人が
じっちゃの奥さん
俺のお祖母ちゃんになってた可能性も、
充分あるんだよなと思い
「 Yes 」と返事を返すと、ニコリと笑う
小松原さんを乗せて、外からドアを閉め
地図を見せながら、場所を示した
「 The Pier Hotel」
「 OK 」
「 岡田君! The Pierって…
それに貴方、乗らないの? 」
「 …… ホテルに着いたら、
フロントで、真木呼んで貰って下さい
お医者さんも居てくれてるんで
俺、ちょっと
タカオさん、捜してきます 」
「 だから、それは一緒に…! 」
「 腰、マジで痛いんでしょう? 」
「 …そんなの痛くたって! 」
「 ―― 言う事 聞けよ 」
窓のサイドに両手を当て、
顔を覗き込みながら、ちょっと本気、
強気で言ってみる
小松原さんは黙ってしまって
浮かせていた腰を、シートに沈めた
「 …やっぱり、"岡田の坊ちゃん"ね 」
―― 久しぶりに聞いた、その呼び名
苦笑すると、小松原さんも微笑む
タクシーは 明るい光の中を
ゆっくりと走って行く
" 母親 " そう言ったから
気を使って
運転してくれているのかもしれない ――