いばら姫





―――演奏を終えて『青山』は
トン、とステージから飛び降りた

…そのひとつひとつの仕種が
カンに障る





ホールの一番後ろに戻るまで
俺は奴らの荷物の側で
目深に被った黒いキャップの下から

腕を組み
じっと『青山』を見つめていた



"奴"も、それに気が付いた様で
少し怪訝な顔をして
一瞬こちらを見たが、
すぐに抱えたベースに、目を戻す


―――ベースじゃなくて
誰かを見てる

そんな表情で




……新原に迷惑をかけるつもりは無い
ただ、話してみたかった

けれどそれは『好意』とは
正反対の物――――




自分で自分の中の火を制御出来ず
半ば真っ白な頭で
人波を移動して、側まで行った








出た言葉は

「……いいベースですね。」

キャップの下の顔は、笑ってみせた








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