いばら姫
「……… いいよ 」
「 あず?! 」
「…料理とか炊事好きだし
寒いのには強いし」
「――夜は俺があっためてやるから
問題無いでしょ
前から言ってるはず。」
「でも」
「……何よ 」
笑う俺に
アズも柔らかい笑顔で言った
「…その最中、
内緒でリュウジの事
考えながら 」
―――― 俺は硬直しながら
笑顔のまま涙を流し
走り去るアズを 見送った
瞬間
新原に胸倉を掴まれ
上から怒声が降って来る
「――― あんな事!!
あの子に言わせたのはおまえだ!!
仲直りして欲しくて
話し合いさせたくて呼んだけど
あんなの喧嘩ですら無い!
切り合いだ!!
売った喧嘩が
倍になって返って来ただけなんだぞ?!
おまえが泣くな!!!」
「…俺は……」
「 何だよ!! 」
「……これが俺の一生だなんて
そんな夢、持った事ないし
あいつが歌をそんなに好きとか
…よく判らないんだ…
タイタニックを見た感想だって
―― 俺はアズが泣いたシーンを見ても
やっぱり心底泣けなかったし
無理なのか…? 俺じゃ
あいつの事、
本気で………好きなのに…」
「…何処で泣けなかったって?」
「………船上楽団が
最後まで演奏しながら
沈んで行った……」
「… そこは
俺も唯一泣いたよ 」
「………Seroも泣いたって
アズも言ってた
――俺は "小羊たちの沈黙"シリーズは
普通に猟奇物語だと思うし
だけどアズは
それもそうだけど
あれは純愛だから、二作目からは
あんまり好きじゃないとか…
そういう所から
きっともう、違うんだ…」
「…その人の中にある物によって
意見も感想も違うよ
そこに、善悪なんて無い
自分の引き出しの中からしか
人は判断出来ないんだから
――俺だって怪我しなかったら
あのシーンできっと泣けなかった」