いばら姫





「…ここが阿尾森なら、黙って従うよ」


アズは少し微笑みながら

―― それは扱く
真っ当な意見ではあるけれど



「…アズは方向音痴なんだし
ここを知らない俺と大差無いべな」


「―― 新宿の地図は
全部頭に入ってるの

ただここら辺は、だいぶ変わってて…

何年も前の歩いた記憶、見たそれが
役に、立たなかった…」



「 …は? 」


―― アズはスッと視線を他所に移す


言った事を、
信じさせようという風情は一切無い
試しに言ってみた風な訳でも無い



「…もう行く 」


「だから待てって!
―― 方角は解ってるんだろ?」

焦れて
動き出さずにはいられない
アズの手を強く握って

俺は風に逆らう様に
その隙間から、抜け出て行った






…バタバタと走る足音は消えている

俺は一旦
道の内側にアズを隠す様にして
背中越しに抱き、アズの手を空けた


「―― 俺のキャップ被れ
髪纏めて、全部入れろ
あ、待てよ
おまえの上、Lだろ

…こっちに変えろ
シルエットが、だいぶ変わる」


自分のTシャツを脱いで、アズに渡す

アズは意図を理解してTシャツを受け取り
…何の躊躇も無く
いきなり自分のTシャツを脱いだ


「バカ!!
…目つむる前に脱ぐなよ!」


「暗いから見えない」


「…それはそうだけどよ」


アズは俺のシャツを着て
髪をひとつに纏め
頭からキャップを取り、被る


「……あれ? 」


「何した? 」


「…… 私、今日 香水付けて無いのに 」


俺は
そんな事は忘れていたから一気焦った


「さ、最近つけてたの切らして
適当にあったのつけたんだよ!

…お前と同じだとしても
特に意味ねえから!

――― 気にしないで歩け!」



アズの服は、自分の白い
アンダーシャツの肩に掛け

白い手を引っ張り、強引に歩き出した








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