大人になれないファーストラバー
朝ごはん食パン一枚ではやっぱり足りなくて。
昼休み寸前の授業になるとお腹が鳴りまくで、腹筋に力を入れてその音を全力で防いだ。
そんなことに心血注ぎ込んでたもんだから、昼休みになる頃には心身ともに疲れはてていた。
「おい、蕾。」
昼休み開始のチャイムが鳴り終わると同時に、咲之助が教室のドアのとこに現れた。
「あ、サク」
「早く来いよ」
「うーん」
「…先行くぞ」
「待ってっ」
机の横にかけていたカバンを持って、今にも先に行ってしまいそうな咲之助のもとに駆け寄る。
あたしがあと少しでドアのとこにたどり着くというところで咲之助は歩き出し、教室の中からは姿が見えなくなってしまった。
「サクっ」
本気で先に行っちゃうのかと、突き放されたようで寂しくなって名前を呼ぶ。
瞬間、足がもつれ、自分の足につまづいて派手に床に倒れ込んだ。
しかも顔面から床にダイブという、一番悲惨な転び方。
ビタンッて音が響いて、一瞬クラスが静まりかえる。
打ち付けた鼻を押さえながら顔を上げると、『ハシモト』と書かれた上履きが目に入った。