大人になれないファーストラバー
咲之助に手を引かれたまま改札を無事に通り抜けて足早にホームに向かうと、ちょうど電車が到着した。
窓越しに電車の中の様子が見える。
通勤や通学のラッシュの時刻は過ぎていたものの、なかなか人が多い。
座れなかったら嫌だなと思いながら、扉が開くのを待って乗り込んだ。
そう言えば。
あたしが出かける時にはお母さんはもう仕事に行った後だったから。
学校をサボって旅行なんてことも知らないわけで。
一泊するのなら何か置き手紙でもしてくればよかったのでは。
そんなことを考えて不安になっていたら、ふいに繋いでた手を離された。
それだけのことなのに、あたしは少し驚いて思わず咲之助を見上げた。
「早く座れよ」
空いていた座席を顎で示して、咲之助は言う。
二つが向かい合っている座席で。
咲之助に座れと言われた方の席の向かいには、もう阿宮が腰を落ち着けていた。
窓の外を流れて行く見慣れた景色。
あたしはそれに引かれるように窓側の席に座った。