大人になれないファーストラバー
一箱に二袋入っていたそのお菓子は、一袋にはあまり本数の入っていなくて。
一袋分はすべて阿宮の口に余裕で収まりきった。
「酷い」
あたしは笑いを堪えながらそう言った。
「大丈夫大丈夫。阿宮だから。」
咲之助は当然笑いまくってて、目に涙まで浮かんできている。
一駅過ぎると電車内はがらりと空いて、冷房の効きすぎがさらに際立った。
阿宮はアナウンスが流れてもまったく起きず、咲之助のイタズラにも気づいていない。
「サク笑いすぎっ」
あんまりにも咲之助が笑ってるから、さすがに堪えきれなくなり。
小さく吹き出すと、それからは笑いが止まらなくなった。
「蕾も共犯だからなっ」
「いやだよっ」
「なんで、見てただけで止めなかったじゃんっ」
と咲之助が言うと。
「あ」
と、阿宮の声がして、あたしたちは向き合って固まった。
そして恐る恐る阿宮に向き直ると…
すーすーと、何事もなかったかのように気持ちよさそうに眠っていた。
「あー、びっくり。 ったく蕾、起こすなよなー」
「あたしじゃないーっ」
と、本気で否定したら。
咲之助は口元に手を当てながら、「はいはい」と笑みを浮かべたままそう言った。