大人になれないファーストラバー


溺れる。


足や手をバタバタ動かしてもがいた。



「た…っ」



助けて。と叫ぼうにも口に海水をガポガポと入り込み声にならない。




「観月っ」




名前を呼ばれると、水中からいっきり引き上げられる。


咳き込んでしょっぱい水を吐き出しながら目を開けると。



なんと。
一生されることのないと思ってたお姫様抱っことやらを、今まさにされていた。



「なっ」


「すぐ浜まで帰るから大人しくしてて」




完全にあたしのことを女だと思ってるみたいで、そいつは真剣に言った。






「離せ」「下ろせ」と何度も叫びながら、結局抱っこされたまま浜に着いた。




ふと、そいつが持っていたカメラがないことに気づく。




「…カメラは?」



浜に下ろされてから、"別に心配してないけど"と言った顔で聞いてみた。



そしたら。



「ん。 今頃はきっと海底から空を見上げてるよ。」




とそいつはにっこり笑う。




「あ、気にしなくて平気だよ。あれはいまいち手に馴染んでないほうのやつだから。」




さらっと言って、そいつは浜に腰を下ろした。


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