大人になれないファーストラバー
「うん。平気。」
意外とあっさり返事が返ってきた。
「そっかあ」
"でも辛かったらいつでも言いなよ"
と、言ってあげたかったけど、本人が平気って言うんならたぶん平気なんだろう。少なくとも今は。
出かけた言葉を寸前で飲み込んで、3限の終わりに買っておいたパンの袋を開けた。
ふと、蕾の視線に気が付いて「なに?」って聞いたら。
「観月さ、なんかきれいになったよね」
って、いきなり恥ずかしげもなくそんなことを言われた。
「そう? 蕾だってますます可愛くなったよ? なのに咲之助くんは見る目ないねー」
なんて言いうと。
蕾は黙り込んでしまう。
そしてまたそんな顔をさせてしまうんだ。
咲之助くんの名前出した時のその切なそうな顔。
蕾、会った時からそうだったよね。
ほんと、分かりやすい。
繊細なまつ毛を伏し目がちにして、人形のそれみたいにゆるくウェーブがかった髪に小さな顔をうずめる。
無表情で、一見何も感じてなさそうに見えるけど。
"咲之助くん"て聞いた時のその顔はまさしく"恋してる顔"だよ。
なんでかあたしには分かるんだ。