大人になれないファーストラバー

電話が切れてから少ししても動けなかった。



あいつはあたしの本当の正体を知らない。

一緒に来いって。
ほぼプロポーズじゃん。

外国は同性の結婚も許されてるとこ多いけど。


…って、そんなことじゃなくて。

それにあいつ、かなり体弱ってるくせに何考えているんだろう。




『最後の時まで写真撮れてたらそれで幸せ』なんて前に言ってたから。

あたしの目が届かないところに行ったら、絶対いい加減な生活を送るに決まってる。





あーもう。本能で生きてるヤツってほんとめんどくさい。
好きなことのためなら死んでもいいって思うその頭、一回かち割ってやりたい。


って。心配させられる度に毎回そう思うのだけれど。

それだから危なかっしくてほっとけなくて。





「やっぱり、ついて行かなきゃなのかな…」




電話越しにはもうあいつの気配はないのに。
ケータイを胸に当ててそう呟いた。




こう言う時は、お母さんがそばにいたらいいなって思う。


高校に入る時に一人暮らしを始めたから、ご飯を作ってくれる人も相談に乗ってくれる人も今はそばにいない。



あたしは男だけど、お母さんは嫁ぐ時どんな気持ちだったのかなって。




すごくすごく迷った?
あたしはすごくすごく迷ってる。




好きな人に「ついて来い」なんて言われれば嬉しいはずなのに。




なんでこんなに苦しいのだろう。



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