大人になれないファーストラバー



好きだけど、勇気が出ない。



それはあたしが大人じゃないから、強くないから。
あいつだけがそばにいれば大丈夫なんてそんなふうに思えない。




「クソ…」




頭を抱えて髪の毛をワシャワシャしながらしゃがみ込む。




行き場のない気持ちをどこかにぶつけたくて、床を殴った。


その男みたいな行動に愕然として、一瞬手を止める。


握りしめた拳が小刻みに震えて、爪が手のひらに食い込んでいく。



やりきれなくて、ケータイをそのへんにぶん投げて部屋を出た。




外に出て、改めて自分が住んでいる場所がマンションだったことに気づいて。
床を殴った音が下の階に響いていて、明日あたり苦情が来そうだと思った。



もし今下の階の人に会ったら八つ当たりしそうなので。
遭遇しないようにエレベーターは使わず、足早に階段を降りた。




田舎っぽい学校付近とは違って、この辺りはなかなか都会的。



大通りに出れば、それはそれは賑やかで。
夜でも車が途切れない。



広い横断歩道を渡って、駅に向かった。


通ってる学校は隣町だから、電車10分あれば着いてしまう。



部屋着のままふらふらと。目的もなく、ちょうどポケットに入っていた小銭で切符を買い電車に乗り込んだ。



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