大人になれないファーストラバー


「そうだね。あたし女の子だからね。」



蕾の目に映るのが女の"観月アヤ"なら、それで通すのが一番いいんだと思った。



「ところで、縮毛矯正一人で出来るの?」




「あ」、と今思いついたように呟く蕾。



「仕方ないなあ、お姉さんが手伝ってあげましょうっ」




あいつにバレないよう、女になりきろうと頑張っていた時に。
ハスキーなこの声がコンプレックスで、そんな時期に褒めてくれたのが、蕾。



蕾が褒めてくれる度、勇気が沸いて自信を持っていったんだ。






「え、いいの?」


「蕾がいいんなら、あたしは全然大丈夫っ」





本当は考えなきゃいけないことがいろいろあるのに、今は一人になるのが嫌だった。

幸せを逃す人って、きっと大きな決断の時に逃げ出す人なんだな、って思う。





それに、"守りたい"とか思っていながら、結局自分の都合のいいように蕾を利用してるだけなのかもしれない。
蕾はきっと"格好の逃げ場"なのだ。





女でありたいのか男でありたいのか、本当に守りたいのはなんなのか。

分からないまま、嘘の笑みを顔に貼り付けて、蕾の家まで歩いて行った。


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