大人になれないファーストラバー
「汚れてもいいタオルってある?」
「ある」、短く答えて、洗面台の下の棚から薄い手ぬぐいみたいなものを取り出す蕾。
それを受け取って、服が汚れないように蕾の首周りにかけた。
タオルの下に入り込んだ長い髪を引き出し、準備完了。
「んじゃお風呂場行こう」
「うん」
蕾はなんだか緊張してるみたいで、口数が少なくなってる。
電車ごっこみたいに蕾の肩に手を置いて、いざお風呂場へ突入。
「…大丈夫かな」
「大丈夫大丈夫」
心配そうな蕾を、鏡の前に桶をひっくり返したその上に座らせて。
密封された袋に「1」と書かれた液と「2」と書かれた液を説明書きの通り混ぜ合わせた。
付属のビニール手袋をはめて、これまた付属のプラスチックのコームに混ぜた液を付ける。
「それじゃ、始めますよー」
「…はい」
少し間を開けてそう答えた蕾。めちゃくちゃ緊張してんじゃんて、笑えてきた。
昔よりは改善されたらしい液のツーンとした匂いは、やっぱりまだ少し気になって。
普段嗅ぎ慣れてないそれは、たちまちお風呂場全体に漂い始めた。