大人になれないファーストラバー


肩にかけたタオルももう意味がなく、蕾は全身びしょ濡れ。





「どうしたのっ」





蕾の肩を持ってこちらを向かせると、その目からはもう完全に涙が流れていた。



「…サクが、マユナの髪の毛コテで巻いてたっ」



「え…」



「今日、放課後、サクがマユナの髪の毛いじってた…っ」




言って、蕾は手で顔を覆って泣き始めた。




「付き合ったって噂、あんまり信じてなくて…っ でも今日見ちゃった…っ」





「あの二人、きっとちゃんと付き合ってるんだ」って蕾が言うと。

曇りガラスがノックされて、蕾のお母さんの声がした。



「何かあった? 大丈夫?」



「大丈夫です。 蕾ちゃん、ちょっと水が目に入っちゃったみたいで。」




蕾を抱き寄せて、鳴き声が聞こえないようにその顔を胸に押し付けた。




「あら、またそんなことで泣いてるの? ごめんなさいねアヤちゃん」



「いえ、大丈夫ですよう」




"またそんなことで"って、あたしが即席ででっち上げた嘘のはずが、どうやら日常茶飯事のよう。




「もう少ししたら出ますのでご心配なく」と言って、お母さんを安心させた。


< 241 / 423 >

この作品をシェア

pagetop