大人になれないファーストラバー
肩にかけたタオルももう意味がなく、蕾は全身びしょ濡れ。
「どうしたのっ」
蕾の肩を持ってこちらを向かせると、その目からはもう完全に涙が流れていた。
「…サクが、マユナの髪の毛コテで巻いてたっ」
「え…」
「今日、放課後、サクがマユナの髪の毛いじってた…っ」
言って、蕾は手で顔を覆って泣き始めた。
「付き合ったって噂、あんまり信じてなくて…っ でも今日見ちゃった…っ」
「あの二人、きっとちゃんと付き合ってるんだ」って蕾が言うと。
曇りガラスがノックされて、蕾のお母さんの声がした。
「何かあった? 大丈夫?」
「大丈夫です。 蕾ちゃん、ちょっと水が目に入っちゃったみたいで。」
蕾を抱き寄せて、鳴き声が聞こえないようにその顔を胸に押し付けた。
「あら、またそんなことで泣いてるの? ごめんなさいねアヤちゃん」
「いえ、大丈夫ですよう」
"またそんなことで"って、あたしが即席ででっち上げた嘘のはずが、どうやら日常茶飯事のよう。
「もう少ししたら出ますのでご心配なく」と言って、お母さんを安心させた。