大人になれないファーストラバー
"協力するから"なんて言わなければよかったって、言ってからすぐに後悔した。
四つん這いのハヤマの大勢はワイシャツの中が微妙に見えて、鎖骨がさっきより露出している。
「マジで? 協力してくれんの?」
「お、おう…」
うろたえ気味に答えて。
自分にない色気のせいか(本人は無自覚みたいだが)、なんだか見てられなくなってハヤマから目を逸らした。
「じゃぁ、さっそく頼みたいことがあるんだけど」
「なに」
目を逸らしたまま短く言う。
「あの…」
ハヤマの声が途切れた瞬間、両肩に手が伸びてきて。
抵抗する間もなくハヤマのほうに振り向かせられた。
そして正面きってハヤマが口にしたことは、
「蕾さんを俺にくださいっ」
廊下に響き渡ったそのセリフ。
そう。
これが"協力するから"と言ったことを後悔した理由だ。
おそらく職員室の中にまで聞こえただろうそれに反応できず。俺は咄嗟にタケちゃんを見た。
「何を言ったらいい?」「どうしたらいい?」と目だけで助けを求める。
するとタケちゃんは気まずそうな顔で目を瞑り、俺の視線を遮断した。