大人になれないファーストラバー
「ハヤマーっ」
ついに床に肘を着く大勢になった瞬間。
タケちゃんの声が響く。
ハヤマの肩越しにタケちゃんを見ると、ハヤマの両足をタケちゃんががっちりと押さえつけている。
…なにやってるんだ俺たち。と、ふと思う。
床に押し倒されそうな自分に迫るハヤマ。おまけにハヤマの足にしがみつくタケちゃん。
怪しい修羅場にしか見えないこの状況に、思わず現実逃避したくなった。
「橋本っ 逃げろっ」
タケちゃんの声で逃避しかけた意識がすぐに戻ってくる。
そうか。
そうなんだな。
タケちゃんは俺を逃がすためにハヤマの足にしがみついているんだな。
やっとこの大勢の意味を理解して、アゴを押し退けるようにハヤマをどかす。
もがいてハヤマの体の下から這い出そうとすると、
「待てぇぇえ」
とハヤマがズボンを掴んでくる。
「離せぇぇえ」
と言いながら、俺はずり落ちるズボンを必死で押さえて、冷たい廊下に這いつくばるようにして逃げ出す。