大人になれないファーストラバー


あれから自転車はどんどん速度を上げて、乗ってるだけのあたしは寒くてしょうがなかった。






ヒゲ面のおじちゃん先生・タケちゃんが竹刀で肩叩きをしながら校門を閉めようとしているギリギリのところで校庭に滑り込んだ。





「セーフ」




そう言ってくれたタケちゃんに、ニカッと笑って見せた咲之助の額には、冬だっていうのにうっすら汗が滲んでいた。





朝からいい汗かいちゃって、すっかり体温が上がった咲之助は学ランを脱ぎ始める。



その脱いだやつを持ってあげようと思って、親切のなにものでもないような自信満々の顔で呼んでみた。






「サクサク」


「2連続で呼ぶなって」


「ごめん。」


「別に。 で?」


「学ラン持つよっ」


「え、自分で持てるし」





それだけ言うと、咲之助は先に歩いて行ってしまった。




立ち尽くしたままそれを見てるあたしに、タケちゃんが一言。





「男にゃーな反抗したい時期があんねや」





ナマリがあって何言ってるかイマイチ分からなくて。





あたしは沈黙のままタケちゃんを一瞥し、それからすぐに咲之助の後を追いかけた。


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