大人になれないファーストラバー


「あ、蕾おはよー。 今日もかわいいなコンチクショゥ」



クラスの違う咲之助はさっさと自分のクラスに入っていってしまい、追いつくことなく一人で廊下を歩いて教室まで着くと。


ドアを開けるなり、語尾にハートでもついてそうな恥ずかしいセリフを押し付けられた。




「うん おはよ。」




いつものことだから、あえて反応しないことにする。




モデル体型で目立ちまくってる観月とは、いつからこんなふうに話す仲になったのか。定かでない。




ただ気づけばいつもそばにいたような。
曖昧に始まったこの交友関係は、今でもまだ不思議な箇所がいくつかある。





「おはようはちゃんと相手の目を見ていいましょう」



観月は両手であたしの顔を包むように固定すると、無理矢理目を合わせてきた。




「観月…」


「だから、"アヤ"って呼んでって言ってるでしょー」


「…アヤ」



「そうそう、よくできました。はなまるりんこ~」






また今日も、この国に新しい言葉が生まれた。


"はなまるりんこ。"



今度咲之助に使ってみよう。
なぜか観月のオリジナルワードは咲之助のウケがいいから。



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