【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙⑤〜
「月の満つ宵のころには参らせな……」

(月が満ちている夜のころには、どうぞいらっしゃいますな。あなたがたにとっては、姉とも妹ともいえる香月でありますのに)

と、このように詠みはじめます後を受けて、二の君が、

「足摺忍ぶ群雲のうち」

(それでは、月の光を隠してしまう群雲の中を忍んで参りましょう。私だけの月を楽しむために)

とお返しになりますと、西の方は、少し枯れた声でお忍び笑いに笑いなさるのでした。
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