きみとベッドで【完結】
カウンターの向こうから、幹生の手が伸びてきて、
ドラムのスティックを器用に扱う長い指が、
あたしの喉をくすぐるようにひと撫でして、
顎をくっと持ち上げた。
「本気で惚れちゃった? オルハ」
張りついた笑みを睨みつけて、
あたしは大きな手を払った。
「その名前で呼ばないで」
ごちそうさまもなしで、席を立つ。
幹生はただ、興味深そうにあたしを見ていた。
「惚れてなんかない。ただ……本気で落とそうと思ってるだけ」
答える必要なんてないのに。
余計なことを話してしまった。
幹生が相手だと、あたしは少し、弱くなる。
反省しながら、あたしは幹生の店をあとにした。