きみとベッドで【完結】


先生が来ていなくても、


家に帰ったら、笑顔でキスをしてあげよう。


幹生の香水のにおいでも、体に移して。



そう思いながらサックスを手にフロアに出た。


ステージに立ってメンバー全員が準備を終えた時、



先生が店に入ってきた。



走ってきたのか、髪のセットが崩れている。



「来た……」



誰にも聞こえないように呟いたのに、


離れたところにいる先生は、聞こえたようにあたしを見て、



優しく笑った。



胸が、つまる。



思わずステージを降りて駆け寄りそうになった時、


幹生のスティックを叩く音が聞こえてきて、



慌ててあたしはサックスを構えた。

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