危険な誘惑にくちづけを
 
 唇が触れあった瞬間。

 佐倉君は、改めてわたしを強く抱きしめると。

 その舌が、わたしの口に割って入って来た。

 決して乱暴ではなく。

 タイミングを見ながら、滑りこんでくるそのやり方は、上手く。

 まるで、わたしをとろかすように動くのに。

 紫音にされたときは、ただ、ただ甘かったキスは、なんで、佐倉君相手だとこんなに苦く……


 ……塩辛いんだろう……

 
 ココロは拒絶しているのに、膝が砕けてしまいそうになるほどのくちづけだった。

 思わず力が抜けた、わたしをすっかり抱きとめて。

 ようやく、わたしの唇から口を離した佐倉君がささやいた。

「オイラ……もう、我慢が出来ねぇよ。
 春陽ちゃん。
 一緒に……へ行こう……」

 佐倉君が、これからどこに行きたいか、なんて聴き取れなかった。

 わたしの部屋?

 佐倉君の家?

 それとも、ホテル……?

 場所は違っても、佐倉君のしたいことは、どこでも一緒で。

 逃げ場のないわたしは、ただ。

 引きずられるように、佐倉君に付いていくしかなかった。
 
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