危険な誘惑にくちづけを
「……見たら、本当にあきらめてくれる?」

「……うん」

 少しだけ傷ついた顔して、佐倉君はうなづいた。

「……誓ってもう、春陽ちゃんに『好き』なんて言わないよ」

「だったら、今日。ガッコが終わったら……」

 そこまで、言ったとき。

 わたしのそで口を、誰かが引っ張った。

「……水島?」

 見れば、水島が、わたしの袖口を握り締めてにこにこ……って言うか、意味深に笑っている。

 今まで佐倉君を無視して、自分のデッサンを仕上げていたハズなのに。

 水島は、スケッチブックを、ぽい、と放り出して言った。

「あたしも、いい?」

「ええっ! 水島まで?」

 驚くわたしに、水島は、ちらっと舌を出した。

「だって、さ。
 やっぱり、興味あるじゃない?
 そんなに、カッコいいヒトが、本当にいるなら」

「……でも」

「大丈夫よ。
 春陽んだってわかっているのに、取りゃしないわよ。
 ホントに、ちらっと見るだけ」

「うーん」

「そもそも、普段外国にいるヒトに、連絡先も教えて貰わないのに、アプローチ出来ないでしょうが」

 ……それは、そう、なんだけど……さ。

 なんか、イヤな予感がする。


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