危険な誘惑にくちづけを
 言い返されて、言葉がでない佐倉君に。

 紫音は、ふふん、と鼻で笑った。

「確かに、ホストのワザは、使ったな。
 店番をしている不機嫌そうなオバさまたちを、笑わせてみた」

 そしたら、この通りだ、とバックをポンと叩く。

「本当にモテるヤツの基本は、まず、会話から、だな」

 か……カッコ良い~~

 さすが、紫音よね!

 片目をつむって見せる紫音に、佐倉君は、悔しそうに黙り。

 わたしは、ばっちり惚れ直しちゃった。

 紫音、やっぱり大好き。

 だけども。

 やっぱり。

 カッコいい♪

 と思うのは、わたし、だけじゃないよね?

 見れば、隣で水島も。

 目をうるうるしている。

 やーん。

 わたし、水島と紫音の取り合いっこなんて、したくないよぅ。

 万が一の場合は、絶対譲らないけどねっ!

 ドキドキ心配な、わたしのココロを知ってか知らずか。

 紫音は、にや、と佐倉君に笑って手際良く料理の下ごしらえを始めた。

「……それと。
 誰にも負けねぇ『使える』特技。
 結構、重要だぜ?」





 
< 50 / 148 >

この作品をシェア

pagetop