危険な誘惑にくちづけを
 驚くわたしたちに、舌を出し。

 諦めたみたいに聞いた、佐倉君に。

 紫音は、肩をすくめた。

「会って、すぐだな」

 ええっ!

 本当に、そうなの!?

 わたし、なんか。

 入学してから、ずっと一緒にいたのに……ちっとも、気が付かなくて!!

「……なんで、判ったんだ?」

「顔つきが、そっくりだ。
 風ノ塚は、鼻と目が特徴的だからな。
 一度見たヤツの顔は職業柄、忘れないし。
 特徴さえあれば、誰が誰の息子かぐらい、すぐ判る」

 た……確かに。

 言われてみれば、そうなのかもしれないけれど……!

 その、顔つきからだけで、佐倉君を見破ったなんて……!

「……へえ。
 ホストって、すごいんだなぁ」

 なんて。

 紫音の言葉に、さすがの佐倉君も、感心した声を出した。

 ……のに。

 紫音は、ヒトの悪い表情(かお)を浮かべて言った。

「ウソだ」

「……は?」

「そんな簡単に、ヒトの親が判ってたまるか。
 人口百人の村じゃあるまいし。
 ……もしかして、本当に、信じたのか?」

「「「うん」」」

 三人そろって、頷くわたしたちに。

 紫音は、笑って莫迦だな、と言った。
 
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