危険な誘惑にくちづけを
「……佐倉?
 あんた。
 風ノ塚って名字じゃないのか?」

 ……へ?

 って、ええええっ!?

 突然、言い出した紫音の言葉の意味に。

 わたしは、一瞬。

 水島と顔を見合わせて、叫んだ。

『風ノ塚』なんて、変わった名字は。

 そこら辺に、ごろごろしている名前ではないじゃない。

 紫音が言う、その意味は。

「あははは~
 まさか。
 この、お莫迦な佐倉君が、風ノ塚先生の親戚、とか言うワケないじゃないですか~~」

 そんなのあり得ないって笑う水島の言葉に。

 紫音は、しかめつらしい顔をして、言った。

「いや、親戚なんかじゃなく。
 ……息子、なんじゃねぇか?
 って思ったんだが?」



 ええええっ!



 それは、絶対、あり得ない~~なんて。

 見事にハモった、わたしたちの声を無視して。

 佐倉君と紫音は、睨みあった。

 やがて。

 変な緊張感に、耐えきれなくなったらしい。

 佐倉君は、あ~あ……って、ため息をついて言った。









「……いつ頃、気がついた?」


 えっ……!

 ええええっ!

 み……認めちゃうわけ!?
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