天使になれなかった。


ふと、凛羽が静かに微笑む。

凛羽の表情一つで空気は一瞬にして柔らかくなる。

「どうしたの…?」

あたしは凛羽の瞳をのぞき込むようにして尋ねた。

夕焼けと、シャボン玉が辺り一面に広がる。あたしたちを包み込むように。

「……もう口きいてくれないかと思った」

「どうして?」

「だって…母親と…」

その言葉の続きは、なかった。
きつく唇をかみしめる。
喉の奥でひっかかって吐き出せないような感じにみえた。


こんなに小さくなって嗚咽すらこらえる彼を誰が責めることができる?


肌に塗りつぶされた罪は拭うことすら怖かった。

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