天使になれなかった。
「嫌だった。もう終わりにしたかった」
俯いたまま、凛羽は小さな声を落としていく。
胸が張り裂けそう。
「始まりがいつだったか、もう覚えてないんだ。思い出したくない……いつの間にか母さんは変わった」
ぽつり、ぽつり、と雨のように静かに降る真実。
「優しくしてくれた記憶だって、ちゃんと……ちゃんとあるのに……」
そんな過去を今でも捨てられずにいる。
「世界が壊れれば……もう全部終わってくれるかなって、思ったんだ…」
かたく閉じたその手は酷く震えていた。
あたしはそっと、その手の上に自分の掌を乗せた。
暖かな温度が広がって、同時になぜか寂しくなった。