天使になれなかった。
「知らない。俺たちは、ただここにいる。何もない。ただここにいる。それだけ」
「……それだけ…」
凛羽の言葉を確かめるように自分の口で呟いてみた。
なぜか、喉が詰まるように苦しくなった。
突然、静かな空気を切り裂くようにあたしの携帯の着信音が軽快に響く。
ダルそうに体を動かしてスカートから携帯をとりだし、ソファに仰向けになって新着メールを読む。
それは、某大手企業の社長からの誘いだった。
流し読みをしたあと返信をせずに携帯を閉じた。
「誰から?」
「優秀なカモから」
「ふーん」
また沈黙。
「ねぇ、今からセックスするの?」