天使になれなかった。
「あれ?どうしたの?なぁ早くいこうぜー」


男があたしの肩に触れる。


その瞬間、胃の中に溜まっていたものが全て戻ってきた。


「うっわ!汚ね!コイツ吐いてる!」

「気持ちわりー」

「頭おかしいだろ!」


胃の中にはもう何も残ってないのに体が勝手に胃液をしぼりだしてくる。

「マジキモいよ。もう行こうぜ」


男が侮蔑の瞳を残して走り去っていく。
通りすがる人もチラチラ見てきて、小声で何かを話している。






濡れたコンクリートに横たわって、虚ろな瞳で自分の爪が食い込み血の滲んだ掌をみつめた。



冷たい雨が倒れた身体を打つ。


雨は激しさを増していく。
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