不器用なLOVER
透弥さんは眉をひそめ腕を組む。

「僕、モテないと思うけど?」

その言葉に耳を疑った。

「誰も話し掛けてこないし、いつも遠巻きに噂してる。
話し掛けただけで逃げられたこともあるし」

無自覚ですか?
話し掛けないんじゃなくて緊張で話し掛けられないんであって、
遠巻きに噂してるのは、遠くからしか見ること出来ない人だからで、
話し掛けて逃げられたのは照れだろうな。
今頃勿体ないことしたって思ってるよきっと…。

「反対だよ?」

私だって、
並んで歩くだけで、
時々触れそうになる手が熱い。

「…ありがとう。
でも、良かったんだ。
人と関わるのは苦手だから」

透弥さんの足が少し速くなる。

引き離されないように、
制服の裾に手を伸ばし

「彼女居ないんですか?」

握った。

「聞いてどうするの?」

真っ直ぐ私を見る。

「気になったから…」

「答えたくない」

怒らせたかな?

その後は一度も私を見ることなく
無言で自宅まで送ってくれた。

来た道を振り返ることなく引き返す背中を、見えなくなるまで見送った。

優しかったり、突き放したり、
どっちがホントの透弥さんなの?

私、どうすればいい?
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