不器用なLOVER
「晶は?」

私は、どうなんだろう?
はっきり気持ちが分からない。
キスは…嫌じゃなかった。
返事を出来ずにいる。

「いいよ。でも必ず僕を好きだって言わせるから。
覚悟しといて」

挑戦的に口角を上げて、笑った。

立ち上がり正面に座り直すと、

「これ以上は、理性が持たない」

呟いた。

顔が赤くなるのを必死で隠して、
誤魔化すように話題を探す。

「どうして眼鏡かけてるの?」

流され気味でずっと聞けなかったけど、やっぱり気になる。

「ポーズだよ。一種のコスプレ」

意外な答えに呆れてしまう。

「それと…人との壁」

単調だった言葉使いが、そこだけダウンする。

「壁?」

軽く息を吐き出すと、

「硝子一枚隔てるだけで、
相手と距離が出来る気がする。
これ以上僕に踏み込まれないでって」

心を閉ざす道具ってことじゃん。
そんなの絶対良くない。

テーブルに身を乗出し、
近付いて言った。

「相手と向き合わなきゃ見えないこともある。
分かり合えないじゃん」

目尻を下げ、微笑み

「君は正直過ぎ」

睫毛を伏せ、

「そういうとこ嫌いじゃない」

呟いた。

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