不器用なLOVER
初めてまともに踊れ楽しくて
曲が変わった事にも気付かずに
ただ透弥さんに身を任せたまま
舞い続けていた。

「そろそろ休もう」

透弥さんの気遣いにも

「えっ?もう一曲だけ…」

「晶が踊りたいだけ僕は付き合うつもりだけど…水分の補給は喉が渇いてからでは遅いんだよ」

来たときと同じ様にフロアから
エスコートする透弥さんに渋々
付いて行った。

「お疲れ…形になってたじゃん。流石は透弥だよな!」

皮肉混じりの拍手で迎え入れられ用意されたグラスを手渡される。

「戻って来られたみたいだね」

それを顔色一つ変えずに受け取り口を付けると。

グラスを差し戻す。

「一呼吸したところで…
説明してもらおうじゃねぇか!」

「説明って…何についてのこと?空振りするのを分かってて朋弥を岡山まで行かせたこと?
その間志穂さんを依頼したこと?晶を委せるっと言っておきながら僕がエスコートしていること?」

感情剥き出しの相手に対して、
平然としているのが勘に触るのか

「分かってんじゃねぇか!
全部に決まってんだろ!」

語気を強める。

その迫力に首を竦める私の横で。

「朋弥なら説明する必要は無いと思ってたんだけど…」

悠然と言い放った。

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