不器用なLOVER
一階で降りたことを確認すると、エレベーターに走る。

下りのボタンを連打する。

私の意に反して一階から各階止まりの一台に、二階で止まったままの一台…

待ち切れずにエスカレーターに飛び乗ったが、並列に占領する人の群れを越えて行くのは困難だった。

仕方なくエスカレーターを降り、階段を駆け降り出す。

逸る気持ちとは反対に、

頭の中は妙に冷静だった。

行ってどうするの?

悔しいけど…、
身長もスタイルもあの二人お似合いだったじゃない。

寄り添い立つ二人の姿がチラつく

透弥さんが好きなら、
私には何も言う資格ない。

私はもう関わりない存在なのに…

透弥さんに何が言えるの?

足取りが重くなる。

やがてそれは走ることを止めた。

店の自動ドアに写る私は、

小さくて、
特別細くもなく、
何も勝るモノを見い出せない。

こんな私が透弥さんに釣り合うはずがないのに…、

バッグが肩に食い込む、

制服でさえも今は鎧のように重く感じる。

帰ろう。

そして忘れよう。

何もなかったことにするんだ。

透弥さんとは出会わなかった…。

透弥さんとは…。

透弥さんのことなんて…。

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