不器用なLOVER
「此は遊びじゃない。
犯罪なんだ。取締役という本来の立場を忘れ、横領し私腹を肥やす…そんな経営で長く続くはずないんだ」

透弥さんの静かだけど力強い声が抱き締められてるせいなのか、胸に響いて消化されていく。

会社経営のことまではよくわからないけど、
透弥さんも悩んだのかも。
ホントは買収なんてする気じゃなかったのかも。
知ってしまったから、
手を懸けずにはいられなくなったのかも。
不器用だけど…すごく優しい人だから。

「彼等には退学を言い渡す。
理事長として見逃す訳にはいかないから」

反射的に顔を上げると、
私を見下ろす目と合う。

「晶が何を言っても譲れない。
彼等には、退学というレッテルを背負ってもらう」

透弥さん勘違いしてる。
私が反応したのは退学という言葉にじゃない。
私はそんなに良い娘なんかじゃないよ。
私が気になるのはその後だよ。
理事長って?
どういう意味?

学園の理事長は私も良く知ってる

辰おじさん=深井辰太郎のはず…

透弥さんは宮原物産のご子息で、ブランドデザイナーの母親がいて…。

ただ無言で瞬きを繰り返し透弥さんを見つめる。

私の様子に微笑んで、

「口、開いてるから」

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