ボーダーライン

「それで?」

 俺は頬杖をつき、彼女が置いたグラスに再び麦茶を注ぎながら尋ねた。

 彼女は後ろに両手をついてひとつため息を漏らし、告げた。

「同棲してた彼氏と別れたの。で、今家なき子ってわけ」

 家なき子……。

 話が、やや重い。

「家なき子って、なんか古くね?」

「じゃあホームレス大学生?」

「まあそれでいいか」

 重苦しい雰囲気が嫌で、俺は笑いを取ることで打破しようとした。

 束の間の笑顔が戻ったことに安心感を覚える。

「というわけで、一ヶ月よろしく」

 真紀は笑顔で言ってのける。

「ちょっと待て。誰も良いとは言ってないぞ」

「え~。ダメ?」

「ダメ」

「どうして?」

 一ヶ月泊まるなんて随分と簡単に言ってのける図々しさが羨ましい。


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