ボーダーライン

「もちろん、タダでとは言わないよ。家賃一ヶ月分くらい出すし。いくら?」

 手荷物を探る真紀。

 ハンドバッグはコーチだった。

「月七万」

 俺が答えると、グッチの長財布からぽんと諭吉を七人取り出した。

「はい」

 パラっとテーブルに置かれた諭吉たち。

 俺は眺めるだけで、ただ呆然とした。

 こいつ、本気だ。

 そう思うほどに、どうしていいかわからない。

「ちょっと。ちょっと待て」

 俺が諭吉たちを差し戻すと、不思議そうな顔をする真紀。

「よく考えろ。一ヶ月泊まるってことは、一ヶ月同居するってことだぞ?」

「わかってるよ」

「風呂もトイレも一つしかないぞ?」

「わかってるってば」

「更にはベッドも一つしかない」

「あたしは床で十分」

 同棲で同居慣れしている強みだろうか。

 俺にはその神経がわからない。

 よく男の家に世話になろうなどと思えたものだ。



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